7:『やっぱり心配性 〜励ます職人〜 』
「ホントすごかったよなー、昨日の大雪。」
「うん。・・・家、壊れるかと思った」
「はははっ、おもろいこと言うねぇ〜。まぁ、壊れても俺らは直してやれるけどなっ」
私の家の中でストーブを焚きながら、シンと私は昨日の大雪について話していた。
「・・・・にしてもひどく壊れたな、屋根」
言いながらシンは、板を釘で打ち付け、応急処置の簡易屋根をしゃがんで作り始めた。
「シンが手ぇ抜いて作ったからじゃないの?」
「ばっ、馬鹿言うなよ!俺はいつだって大真面目にやってんだぞ、仕事は!!」
「ふ〜ん。いいから早く直してよ、ほら。じゃないとこの寒い中、屋根なしで寝なくちゃならないし」
「・・人使い荒いよなぁ、ティナも」
「何か言った?」
「いやっ、何でもありません」
大雪で屋根が壊れるなんて前代未聞だ。
本当にびっくりしたんだ。いきなりズドンって音がしたと思ったら、
上から雪と一緒に屋根の破片がドサドサと落ちてくるんだもん。
・・・・・おかげで、変なことを考えてた私の頭はちょっと冷えてスッキリしたけど。
こうやってシンっていう話し相手も見つかったし。
私はマグカップにココアを作って、シンにも渡してあげた。
「今日も冷えるよね」
「んあ、ありがとっ。そうだなー、手ぇかじかんで動かなくなりそうだ」
「・・・・・・え」
『手がかじかんで・・・・・』
頭から爪先まで、いっきに硬直していく感じがした。
「・・・どした?」
異変に気付いたのか、シンは私に気遣って言った。
「な、何でもない。何でもないよ、うん。」
「んな訳あるかっ。顔色悪いじゃんか。風邪でもひいたか?」
「・・・ううん、違う。あ!そうだ、運んでくれた冷蔵庫、役に立ってるよ」
あからさまだと判っていたけど、話題を逸らす為に変にふっかけてしまった。
シンは右手に釘を打ち込む為のハンマーを握ったまま、私をじっと見ている。
「話逸らすなよ!風邪じゃなくても気分悪かったら早めに休んどけって」
今、弱音を吐いて楽になることはできるけど・・・
単純にシンの優しさが嬉しかったので、胸が熱くなった。
「・・・・・・・大雪ね、」
「ん?」
「大雪の日に、両親・・・死んじゃったんだ、交通事故で」
「・・・・・・」
「だから雪が降ったりすると、未だに胸が苦しくなっちゃって。」
「・・そか。」
「・・・ふふ、おかしいよね。もうあれから大分経つのにさ、まだこんなに残ってる」
可愛がってくれた両親、その存在を一気に失くしたあの日の悲しみが。
「あ、ごめんね!なんか暗くて・・・っ」
「いんや、俺とハヤトも同じようなモンだからさ、気持ち、何となく判るよ」
そういえば、ハヤトがそんなことを言ってたっけ。
「まー、俺に言えることとすれば、」
「?」
そう言うとシンは立ち上がり、私の頭に手を伸ばしてポンポン、と軽く撫でた。
「無理、すんなよ」
「・・・・・うん」
やっぱり兄弟だと思った。
ハヤトにも無理するなって言われたよね。
翌日、青空と共に吹っ切れた私は職人小屋に大量の魚を仕入れたのは言うまでもない。
その方がティナらしい、と言ってくれたシンのためにも、これからもっと頑張らなくちゃ。
・・・私の本当の弱音、いつか話せる日が来るだろうか。
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