6:『心細さ 〜心配性な職人〜 』
は、入らない。
何てこった。今まで順調に使ってきたこの冷蔵庫くんの扉が閉まらないなんて。
かと言って、冬場に外に作物なんか放り出しておいたら凍っちゃうしなぁ・・・・・
よし!新しい冷蔵庫買いに行こう。
この頃宝石を出荷したおかげで、大分お金も貯まったし。日々の努力が報われるとはこのことだね。
自画自賛しながら私は雪道の中を職人小屋へと進んで行った。
「親方ぁー!!!・・・・あれ?」
小屋のドアを開けると、そこには親方の姿ばかりか、
いつも暇そうにしているシンとハヤトでさえ見かけない。
「留守・・・?それにしてもストーブは点いてるし」
失礼かな、とは思ったけど、奥の部屋まで入って覗いてみた。
「・・・何だ?」
「わ!!いたの?びっくりしたぁ」
「そりゃ、いるだろ。何か用か?」
そこには座布団を枕にして昼寝をしていたハヤトがいた。
「親方はどこ行ったの?」
「鉱石場に行った。一人じゃしんどいからって、兄貴も連れて」
「ふーん。・・・ね、私冷蔵庫買いに来たんだけど」
「・・じゃあ、そこにあるの適当に選んで」
「アバウトだなー。私一応客だよ?」
「・・・・にしても何で冷蔵庫?」
「あぁ、食料入りきらなくなっちゃって。頑張って秋の間蓄えておいたさつまいもとか、卵とか。」
「・・・・・・・・」
「あ、おすそわけ欲しい?1個でいいならあげるよ」
「・・・・お前さ」
「ん?」
冷蔵庫を見に行こうとする私を、ハヤトは中途半端に起き上がって止めた。
「なんで・・・そんな、元気でいられる?」
「・・・・・・・え?」
「お前、確か両親亡くしたんだろ?そんなでよくやってけるな」
「・・・何でそう思うの?」
「いや、俺も・・・両親、いないも同然だから。気持ち判らなくもない」
「・・・・・そっか」
「だけど俺は、お前の立場にあったらそんなに明るく振る舞えない。なぁ、無理してないか?」
冷蔵庫、見なきゃ・・・・
そんな言葉だけが、頭の中をグルグル回っていた。
あんまり触れて欲しくないところに触れられちゃった感じが、する。
私はわざとハヤトに目を合わせないようにしていた。
「・・・こないだ、青空牧場でお前見かけたとき、すごく辛そうな顔してたぞ。あれは・・」
・・・・見られてたんだ。
青空牧場に行く度、本当はちょっと辛かった。
そう、他の家族の幸せが私には痛い。
「やっぱりお前、無理してるだろ。俺が・・・・・」
「それでも」
「?」
私はハヤトの言葉を遮って言った。
「それでも、やっていかなきゃ。頑張っていかなきゃ」
「・・・・・・・・」
「だって私には、それしかできないから」
「・・・そう、か」
「・・・・へへ。それにね。もう慣れちゃった、って言うと変だけど・・・
ウチの親が死んじゃったのも大分前だし。寂しいって気持ちは無くなったのかもしれない」
「・・・そうか。・・・・・悪かったな、変な話ふって」
「ううん。もう平気・・だよ。それより私、この冷蔵庫にするね!」
と言って指を差したのはこの業務用のような大きい冷蔵庫。
「・・・・・本気か?」
「ん。本気!いつかはこれも閉まりきれないくらい作物作ってやるんだからっ。
おーっし、頑張るぞーー!!!」
私は背伸びをするように両腕を天井へ向かって伸ばした。
「ああ、・・・・・そうだな」
「ん?」
「いや、何でもない。それよりこの冷蔵庫、親方たちが来たら3人で運んで持ってってやる」
「うん、ありがと」
「もしかしたらお前なら、一人で持って帰れるかもしれないがな。」
「・・・・・相変わらず一言多いね、ハヤト」
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