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4:『大食いの君 〜ちょっと休憩〜 』








「ウェンさんいつもの頼むねっ」

「あいよ、ティナちゃん」




牧場の仕事が一区切りついた昼時には、いつもこの止まり木の宿に来てご飯を食べている。

いつの間にか常連さんになっていたので「いつもの」と言うだけで、
ウェンさんはあのメニューを出してくれる。


「へい、お待ち!冷めないうちに食えよ」

「わ〜い、ありがとうウェンさん!いっただっきまーす!!」


と言ってスプーンを取り、チーズオムレツを食べはじめた。
傍らにはあおぢる。

以前これを飲んでいたときに「お前、正気か?」とブルーに言われたことがあったっけ。
でも私にはこのセットがやめられないんだって。


それにしてもここのチーズオムレツは最高に美味しいんだよなぁ。とろける感じがたまらん。




「美味そうに食うなぁ。」

「はふ?」


急に後ろから声をかけられ、スプーンを口にくわえたまま首を声のする方へ曲げた。


「あ、カザン!そっちも今お昼?」

「おう。ここの飯はめちゃくちゃ美味いからな!軽く5人前くらいはいけるって」

「へぇ、すごいじゃん。でも私もけっこう食べる方だよ?」


そう言うと、私はあおぢるをぐびっと飲み干した。


「おっ、自信満々だな。じゃあどうだ?ひとつ大食いで勝負ってのは」

「!」



勝負事。最近、牧場仕事でまったりしてたからついつい忘れるとこだった。


こういうの、大好きなんだよね。


「その勝負乗ったぁ!!!」

「うっし、じゃあこのピリカラ炒めを5分間で何皿食えるかでいいか?
 お互いそんな長メシしてる暇もないしな、こんくらいの時間でちょうどいいだろ」

「ん、おっけー。どんとこいだっ」




ウェンさんは複雑な表情を浮かべながら、どんどんカウンターの上にピリカラ炒めを乗せていく。


私とカザンはまるで腹を極限まで空かせた猛獣のように食べ続けた。
今私はちょうど6皿目。まだ、いけるかな。

・・・にしてもピリカラとは言え、こんだけ食べると舌の感覚がさすがに麻痺してきた。

横目でちらっとライバルの様子を見ると、
一向に衰えないスピードで黙々と食べ続ける姿が目に入った。


ま、負けらんない。

ここまで来たら絶対勝ってやるっ。







「おい。大丈夫か?」

「はい・・・・大丈夫れす」

「ほら、水飲みな。・・ったく、お前も無茶するヤツだな」


ウェンさんに介抱されながら、私は我ながら情けないと後悔した。

結局、カザンには11対9で負けてしまったから。

すごいねカザン、とまだ回らない舌で喋ると、「まだまだいけるぜ、本当は」と言われた。


最初から敵わぬ敵、ってやつですか。




ウェンさんには迷惑かけたので、今度自家製のチーズを差し入れに持ってくると約束した。


自分のお腹をポン、と叩いて宿のドアを開け外に出ると、そこにはドクターが立っている。


「あ、こんにちわ」

「こんにちわ、って・・・どうしたんだい?顔色が悪いようだけど」

「あー・・、これはね。ちょっと大食い勝負なるものをやっていて、それで」


それで、今はいっぱいいっぱいなんです、と後から付け足すと、
ドクターは呆れたように溜め息をついた。


「君はまた無茶をして・・・・・」

「へへっ、すいません。それウェンさんにも言われちゃいました」

「笑い事じゃなくて。節度を守らないと駄目ですよ?」

「・・・・・・ごめんなさい。あ!それよりドクターは何でここに?珍しいですねっ」


聞くところによると、ドクターはたまに気分転換にここのあおぢるを飲みにくるらしい。
らしいと言うか、何と言うか。

ドクターの話を聞いていてまたあおぢるが飲みたくなってしまった私は、宿にとんぼ返りして
ドクターと雑談を交わしながらこの青緑のジュースを飲み干した。



・・・・・やっぱりお店に来たら、ゆっくりとした時間を楽しむべきだよね。


もう当分、大食い勝負はしなくていいやと心に誓った日になった。








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